自衛隊にも競技がある。しかも部隊同士の意地とプライドをかけた、なかなか本気の世界である。
今回はその話を書く。最後に自分の話を書くので、先に「苦手だった競技」から並べていく。
自衛隊の三大競技
大きく分けて、競技は3つある。
- 射撃
- 銃剣道
- 持久走
それぞれに対抗戦があり、中隊対抗、群対抗と勝ち上がっていく。部隊の名誉がかかっているので、みんな本気である。
① 射撃 — スコープは一切なし

射撃は、オリンピックと同じように的を狙って点数を競う競技だ。ただし自衛隊ならではの違いがある。
- 使うのは自衛隊仕様の自動小銃
- 距離は50m・100m・200mと複数設定
- スコープ(照準器)は一切なし。完全に目視で狙う
これがなかなか難しい。風も読まないといけないし、そもそも遠い。優秀な成績を残せば射撃選手への道が開ける。
私はというと、射撃は比較的得意だった。**ただし「中の上」である。**同じ中隊に自分より上手い隊員が何人もいて、選手になったりならなかったりを繰り返していた。
その選手の中でもダントツで圧倒的な隊員がいた。みんなからはナゼかデュークと呼ばれていた。若い人はあまり知らないと思うが某青年マンガの主人公をもじっているのだ。
② 銃剣道 — 心臓への一突きだけが一本
銃剣道は、名前から剣道に似た競技だと思われがちだが、ルールがまったく違う。
| 剣道 | 銃剣道 | |
|---|---|---|
| 勝ち方 | 面・胴・小手を打つ | 心臓の位置を突く一本のみ |
| 喉への攻撃 | あり | あるが、一本になりにくい |
つまり、**狙うところがほぼ一箇所しかない。**これが独特で、剣道の経験者からは「銃剣道の方が面白い」という声も多いらしい。
剣道は竹刀で戦うが、銃剣道はその名の通り銃のかたちの木でできたものを斜め上に突き上げ相手の心臓部分を狙って戦う競技である。
ところで余談なのだが、「はじめ!」の合図ですかさず相手の胸を突くと一本となりやすい。これを初一本(しょいっぽん)といい弱者でも有段者に勝つ唯一も方法である。勝てば大金星、負ければ「よくやった」と労われる。まぁ大金星などめったに見れないのだが・・・
競技人口も比較的多く、全国大会は日本武道館で開催されるほどの規模である。
そして私はというと、**銃剣道もあまり得意ではなかった。**選手が足りない時に駆り出される、いわゆるヘルプ要員である。情けない話やけど、事実なので書いておく。実際の話し得意でないものなので真剣にならなかったのが本音かな・・・負け惜しみではあるが。
③ 持久走 — 実態は駅伝
持久走は、簡単に言えばマラソンだ。ただし自衛隊式は少し独特である。
- コースは駐屯地の外周
- ランナーが一周ずつ走ってつなぐ
- 感覚としてはマラソンより駅伝に近い
中隊対抗、群対抗といった団体戦があり、特に群対抗は部隊同士の意地がぶつかる。あれは見ていて熱い。
……が、**足が遅い私には最も縁遠い競技だった。**このブログで何度か書いているが、長距離だけはどうにもならなかった。持って生まれたものなので仕方がないのである。ムリなものはムリ!
で、お前は何が得意やったんや
ここまで読んで、こう思われたはずである。
射撃は中の上。銃剣道はヘルプ要員。持久走は苦手。結局こいつ、何ができたんや?一つぐらいは得意なものあるやろ・・・じつはあったのです。
そらが、徒手格闘だった。
一貫性のないスポーツ歴
その前に、私のスポーツ歴を書いておく。
- 小学校:少年野球(通称ライパチ→ライトで八番バッター)
- 中学校:水泳 (野球で目が出ず、とりあえずその夏は暑かったので・・・)
- 高校:帰宅部……(のはずが、なぜか突然友人にさぞわれ伝統空手をしに近所の道場へ)
我ながら、まったく一貫性がない。だがこの高校時代の空手が、後で大きく効いてくることになる。人生、何が役に立つか分からんものである。
徒手格闘とは何か

徒手格闘というのは、戦場でナイフや銃剣などあらゆる武器に対して防御し、攻撃し、相手を制圧するための技術である。
つまり、**「戦場で生き残るための術」**そのものだ。
その技術体系を競技化したものが「自衛隊徒手格闘(拳法)」と呼ばれる。ベースは日本拳法だが、そこにいろいろな技術が加わった、かなり特殊な競技である。
使える技
- 直突き、前蹴りなどの打撃
- 投げ技
- 首相撲
- 関節技
- 膝蹴り
ルール
- 3本中2本先取で勝ち
- 防具を着用する
- 寝技はなし
現代風に例えるなら、**「防具をつけて、寝技をなくしたMMA」**といったところだろうか。字面だけ見ると物騒だが、実際そういう競技である。
私のスタイルは「正面に立たない」
自分で言うのも何だが、**私はこの競技の選手だった。**そこそこ強かったと思う。
ただし、強かった理由は根性でも力でもない。私は痛いのが嫌いで、根が怖がりだからである。
だから独自のスタイルを作った。鉄則はこれ一つ。
相手の正面には、絶対に立たない。
常に相手のサイドに回り込む。攻撃をかわして、かわして、かわし続ける。そして相手が疲れたところを一気に叩く。
そこに高校時代の空手で覚えた「遠い距離からの飛び込み突き」と「足払い」が加わった。あと、意外と俊敏だったのも武器だった。
要するに、まともに殴り合わずに勝つ方法を必死で探していただけである。痛いのが嫌いな人間の知恵やと思ってもらったらいい。(卑怯者とは言わないでね)
あの腰痛だけは、今でも悔やまれる
いい話ばかり書いても仕方がないので、悔しかったことも書いておく。
大きな大会の切符がかかった選考大会の直前に、腰をやってしまった。
結果、選手に選ばれることはなかった。あそこで出られていたら何かが変わっていたのか、それとも大したことにはならなかったのか。今となっては分からない。
それでも、あれだけは今でも悔やまれる。
腰というのは、この後の人生でもずっと私を悩ませることになるのだが、その話はまた別の記事に書いた。
最後に、正直な話をする
こういうことを書くと、たまに聞かれる。「じゃあ、街で襲われたらどうするんですか?」と。
正直に答える。まず逃げます。全力でにげる。
理由は単純で、生き残ることが大前提だからだ。徒手格闘は「戦場で生き残るための技術」である。逃げられるなら逃げるのが、一番正しい使い方なのだ。刃物を持った相手に立ち向かうなんてのは、映画の中だけの話である。
ただし、守るべき人がいる場合は話が別だ。
その時は、腕の一本くらいは覚悟して守りにいくしかないのかな、と思っている。
技を覚えた人間ほど、まず逃げる。だが逃げられない時のために覚えている。これが徒手格闘を習った人間の、正直な心境である。これから先そうゆう場面に出会わないように祈りたいのが本音かな。
基本平和主義者であるので・・・
今日の一句
自分にも ひとつぐらいは とりえあり
ではまた。
※この記事は昭和末期の勤務経験にもとづく個人の回想です。現在の競技規則・運用とは異なる場合があります。


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