前回の記事で「酒をやめたきっかけは痛風だった」と少しだけ触れた。その前の記事では「死ぬ前にタバコを一本吸いたい」とも書いた。今日はシリーズの締めくくりとして、その痛風の話を、覚悟の上で詳しく書こうと思う。読んでいて痛くなったら申し訳ない。だがこれから痛風になるかもしれない人、あるいは既に予備軍の人には、絶対に知っておいてほしい話である。
初めて痛風になったのは、今から20年ほど前のことだ。あの日の朝は今でも鮮明に覚えている。確か日曜日で、仕事は休みだった。朝、目が覚めて足を見た時——右足の親指が、普段の倍近くに腫れ上がっていた。
大きさで例えるなら、ドイツのフランクフルトソーセージ。あれくらいの太さになっていた。しかも真っ赤である。最初は何が起きたのか本気で分からず、「俺、寝てる間に足の指を折ったのか?」と本気で思った。それくらいの見た目だった。
「風が吹いても痛い」なんてもんじゃない
痛風の痛みについては、よく「風が当たっただけで痛い」と言われる。だが、あれは全然生ぬるい表現だと私は思う。実際の痛みは、そんなレベルではない。
ずっとジンジン、ジンジン——太い針で刺され続けているような、鈍くて執拗な痛みが延々と続く。しかも精神的にジワジワ来る嫌な痛み方をする。あれは、なった人間にしか本当のところは分からないと思う。
特にきついのが、立ち上がる瞬間と、歩き出しの一歩目である。足の指なので体重がもろにかかる。だから親指だけを反り返らせて、そこに体重を乗せないように歩くしかない。忍者みたいな歩き方だ。トイレに行くのに、私は最初「這って」行った。それくらい歩けなかった。
当然、翌日の月曜日は仕事どころではない。まともに歩けないのだから会社に行けるわけがない。
病院で医者に笑われる
月曜だか火曜だかに、ようやく病院に行った。診察室に入って足を見せた瞬間、先生がニヤッと笑ったのを今でも覚えている。
「マサキさん、おめでとうございます。完全なる痛風発作です。良かったですね」
いや、何がおめでたいんだと。とりあえず尿酸値を測ることになり、その日のうちに結果が出た。
「8を超えてますね。正常値は7以下と言われてるんですけどね、大きく飛び跳ねてますよ」
医者からは食生活の話をあれこれ聞かれた。一日どれくらい酒を飲むか、何を食べているか。そして最後にこう言われた。
「良かったですね。これでお酒やめられますね」
やめられるかい、と心の中でツッコんだ。だがまさか、この言葉が20年後に現実になるとは、当時の私は思ってもいなかった。
痛風は「下から順に」上がってくる
痛風の恐ろしいところは、繰り返すたびに発作の場所が上に上がってくることだ。私の経験で言うと、こういう順番で来た。
最初は足の親指。次はくるぶし。その次は反対側の足の親指。ここまでは「痛いけど、まあ我慢できる」レベルである。
問題はその次だ。膝に来る。
膝の痛風と、白い液体を抜く注射
膝の痛風は次元が違う。腫れる範囲が広い分、痛みも桁違いだ。足の指の痛風の2倍は痛いと断言できる。歩けないなんてもんじゃない。松葉杖が本気で必要になるレベルだ。
この時ばかりは、さすがに医者の先生も「これはちょっとやばいですね」と表情を変えた。膝に溜まった尿酸結晶を、注射で抜くという処置になった。
大きめの注射器を膝に刺して、中の液体を抜く。抜かれた液体を見て私は驚いた。血液じゃない。真っ白なのだ。牛乳みたいな白い液体が、注射器いっぱいに溜まっていく。それを2本か3本、たっぷり抜かれた。
だがこの処置、痛かったのは最初だけである。1本抜くごとに、あの地獄のような痛みがスーッと引いていく。3本目を抜き終わった時には、もうほとんど痛みがなかった。感動したね。ジャンプできそうな気さえした。あの瞬間だけは、医療技術に心から感謝した。
上半身に回ったら終わり
膝の次はどこに来るか。手首、肘、肩と、今度は上半身に上がってくるらしい。私はそこまで進行する前に食い止めたので経験はないのだが、医者に写真を見せてもらったことがある。
肘の痛風になった人の写真は、もう普通ではなかった。肘全体がボコッと変形して、腫れているというより「盛り上がっている」という感じだった。あれを見て私は本気で思った。「上半身に回ったら人生終わりだ」と。
ここでようやく私は、「酒、本気でやめないとまずいんじゃないか」と考え始めた。私の場合、明らかに酒が尿酸値を上げていた。
わかめが、私には効いた
酒をやめる決心をする前に、私はまず「何とかならないか」といろいろ調べ始めた。痛風に効くと言われるものは、片っ端から試した。
コーヒーがいい。牛乳をたくさん飲め。プリン体の多い食事は控えろ。ネットや本にはいろいろ書いてある。科学的根拠はよく分からないが、藁にもすがる思いで試した。
その中で、私に一番効いたのは意外なものだった。**海藻類、特にわかめ**である。
これは本当に効果覿面で、毎日わかめを食べ続けた3ヶ月ほどは、痛風発作がピタッと止まった。その後の半年間も出なかった。私の体には、わかめが合っていたのだと思う。
ただし、これは私の個人的な体感である。人によっては別のものが効くだろうし、逆に効かないかもしれない。痛風の原因も、酒を飲まないのに尿酸値が高くなる人もいるくらいで、個人差が大きい病気だ。
それに、わかめには一つ問題がある。飽きるのだ。最初の3ヶ月は気合で食べられるが、半年も続けると見るのも嫌になる。そしてやめた途端、また痛風発作が来る。この繰り返しだった。
マサキ流「薬を使わない」治し方
痛風発作が起きた時、医者はいろいろ薬を処方してくれる。だが私のやり方は、「薬を一切使わずに、少々痛くても歩き倒す」というものだった。
これは医学的にお勧めできる方法ではないと思う。ただ経験上、薬を使わずに自力で治すと、次の発作までの期間が明らかに長くなる感覚があった。体が学習するのか、あるいは単なる思い込みか。真相は分からないが、少なくとも私の場合はそうだった。
もう一つ、痛風には不思議な現象がある。**3回に1回、とてつもなく痛い発作が来る**のだ。1回目、2回目は「まあ、いつもの痛風か」で済むのだが、3回目に必ず「これで死ぬんじゃないか」というレベルの激痛が来る。まるで「まだやめないのか」と何者かに試されているような感覚である。あれは不思議な経験だった。
本当の犯人は、ビールじゃなくて揚げ物だった?
痛風といえばビール、というイメージが強い。だが私の場合、犯人はどうやらビールだけではなかった。
「ビールが悪い」と聞いたので、しばらくビールをやめて焼酎や日本酒に切り替えた時期があった。だが、ほとんど変わらなかった。なる時はなる。結局アルコールそのものが私の体には合わないのだと悟った。
そしてもう一つ、私が「これが本当の犯人じゃないか」と疑っているのが、**揚げ物**である。特に唐揚げ。私は唐揚げが大好きで、しょっちゅう食べていた。とんかつも大好きだ。あの「肉を油で揚げたもの」が、私の場合は効果覿面で痛風を呼び寄せていた気がする。
プリン体で言えばレバーや白子が有名だが、私の実感としては揚げ物の方が明らかに危険信号を出していた。ここも個人差なのだろう。
今の状態と、朝のトラウマ
酒をやめて数年、今の私の尿酸値は6前後で安定している。痛風発作もほとんど出ていない。
これは酒をやめたおかげである。前回の記事で「酒とタバコをやめても人生そんな変わらなかった」と書いたが、この痛風の一件だけは別だ。痛風の激痛から解放されたことだけは、酒をやめて明確に良かった点である。
ただし、20年間痛風に苦しめられた記憶は、そう簡単には消えない。今でも朝目が覚めた瞬間、無意識に足の親指の状態を確認してしまう。「腫れてないか?」と。あの痛みのトラウマは、体が覚えている。
これから痛風になりそうな人へ
最後に、痛風予備軍の方に私から言えることを書いておく。あくまで個人的な経験と感覚である。
私の感覚では、**尿酸値が高くて太っている人**は、ほぼ確実に痛風になる。もちろん個人差はあるが、この2つが揃っている人は要注意だ。
予防のポイントは、酒を控えることも大事だが、それ以上に**日本食を中心にする**ことだと思う。油ものと肉を控えるだけで、かなり違う。ただし若いうちは「油も肉も食べたい盛り」だろう。だから難しい。
「痛いのは絶対に嫌だ」という人は、酒をやめるか、完全に日本食にシフトするか、どちらかしかない。中途半端は効かない。あの痛みを一度でも経験すれば、この覚悟がなぜ必要か分かってもらえると思う。
——今でも朝、足の指を確認してしまう私からの、切実なメッセージである。

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